
2015年採択のパリ協定は、気温上昇を「2℃より十分低く、可能な限り1.5℃に抑える」ことを196の締約国に求め、2050年頃までのネットゼロ達成を世界共通の方向性とした。
ネットゼロとは人間活動による温室効果ガス(主に CO₂ など)が、大気中に放出される量と、大気から除去・吸収される量とが 均衡する状態。再生可能エネルギーへの転換(化石燃料の使用削減)は、その中心的要素だ。
国連は2025年7月の特別報告書で、パリ協定採択以降の10年間で再生可能エネルギー(再エネ)の導入が急拡大したと評価。世界発電量に占める再エネ比率は、2015年の23%から2024年32%に飛躍した。
太陽光・風力のコスト低下が背景にあり、60か国以上が国内電力の半分超を再エネで供給、そのうち15か国は90%以上に達する。IEAは2030年に世界電力の約45%が再エネ由来になると見通している。
一方、エネルギー需要の大半を占める分野では依然として化石燃料依存が継続しており、電力部門の進展のみではエネルギー構造全体の転換には至っていない。
COP28(2023年、ドバイ)で採択された「2030年までに再エネ設備容量を3倍(約11.2 TW)へ」という国際目標に対し、2025年11月時点の各国新NDC提出見込みは約6.9 TWとされ、達成の見通しは厳しい。
主要国の2030年の目標数値に対する再エネ発電割合では、デンマーク、ポルトガル、イギリス、オーストラリア、ブラジル、スイス等が99%から83%の高い達成率。日本は38%でG7中ではラスト。エネルギー自給率も最低水準(13.3%)であり、これからの脱炭素への取り組みが注目される。
途上国では、設備投資や送電網強化への投資が著しく不足し、発電部門が進む一方で、産業、交通、建築など大半のエネルギー消費分野で脱炭素化が遅れている。
COP30(2025年、ブラジル)では、気候資金の新目標(NCQG)を2035年までに3倍へ拡大する努力を呼びかけた一方、化石燃料からの脱却への合意には至らなかった。
再エネの拡大は確かな前進だが、それだけでは1.5℃目標とネットゼロの達成は遠い。産業・交通・建築を含む消費分野の脱炭素化、途上国の資金アクセス改善、そして化石燃料依存を減らす政策的合意を具体化できるかどうかが、今後の鍵だろう。








